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72の法則の導出

72 の法則とは、ある利回りで資産を運用した時に、およそ何年後に 2 倍になるのかを簡単に計算できる公式です。 具体的には以下のような公式です。

年利xx%で運用行った時、pp年後に資産が 2 倍になるとする。この時、ppは以下の式で近似できる。

p=72/xp = 72/x

具体的に計算してみると、確かにこの式で近似できていそうです。

利回り 実際のpp 72 の法則によって導かれたpp
2% 36 36
3% 24 24
4% 18 18
6% 12 12

ここでは、72 の法則が成り立つ理由を見ていきます。

72 の法則の導出

まず、定義から以下のような式が得られます。

(1+x/100)p=2(1+x/100)^p=2

ここで、便宜のためにX=x/100X = x/100としておきます。

両辺の対数(自然対数)を取ると

plog(1+x/100)=log2p {\rm log}(1+x/100)= {\rm log}2 (1)

ここで、log(1+X){\rm log}(1+X)について、マクローリン展開を行った結果を使います。

log(1+X)=X12X2+13X314X4...{\rm log}(1+X) = X - \frac{1}{2}X^2+ \frac{1}{3}X^3- \frac{1}{4}X^4 ... (2)

ここで、X=x/100X=x/100であったことから、XXは 1 より小さいと仮定します(利回りは 100%より小さい)。1>a01 > a \geq 0である数aann乗はnnが大きければ大きいほど小さくなるため、(2)式の右辺第二項以降を無視することにすると、

log(1+X)X{\rm log}(1+X) \fallingdotseq X (3)

が導出できます。

(1)式に(3)を適用すると、

px100=log2\frac{px}{100}= {\rm log}2

となります。

log2=0.69314718056{\rm log}2 = 0.69314718056

から、px=69.3p x= 69.3です。

なんと、72 ではなく、69 という数字が出ました。これには理由があり、69 は約数が少なく扱いにくいため、たくさんの約数を持つ 69 に近い数字の 72 が使われるようになったのです。

また、72 の法則はlog(1+X)X{\rm log}(1+X) \fallingdotseq Xという近似が含まれるため、(2)式の第二項が大きくなってしまう 30%、40%のような利回りではかなり近似の精度が落ちてきます。大きい数字でのズレをみてみましょう。

利回り 実際のpp 72 の法則によって導かれたpp
8% 10 9
12% 7 6
24% 4 3
36% 3 2

ただ、ここまでの利回りになってくると 2 倍になるまでの年数自体があっという間であり、2 倍になるまでに何年かかるか、と言う計算自体がほとんど意味を持ちません。結果、実用的な範囲では 72 の法則が十分有効だということが分かりました。