72の法則の導出
August 10, 2021
72 の法則とは、ある利回りで資産を運用した時に、およそ何年後に 2 倍になるのかを簡単に計算できる公式です。 具体的には以下のような公式です。
年利%で運用行った時、年後に資産が 2 倍になるとする。この時、は以下の式で近似できる。
具体的に計算してみると、確かにこの式で近似できていそうです。
利回り | 実際の | 72 の法則によって導かれた |
---|---|---|
2% | 36 | 36 |
3% | 24 | 24 |
4% | 18 | 18 |
6% | 12 | 12 |
ここでは、72 の法則が成り立つ理由を見ていきます。
72 の法則の導出
まず、定義から以下のような式が得られます。
ここで、便宜のためにとしておきます。
両辺の対数(自然対数)を取ると
(1)
ここで、について、マクローリン展開を行った結果を使います。
(2)
ここで、であったことから、は 1 より小さいと仮定します(利回りは 100%より小さい)。である数の乗はが大きければ大きいほど小さくなるため、(2)式の右辺第二項以降を無視することにすると、
(3)
が導出できます。
(1)式に(3)を適用すると、
となります。
から、です。
なんと、72 ではなく、69 という数字が出ました。これには理由があり、69 は約数が少なく扱いにくいため、たくさんの約数を持つ 69 に近い数字の 72 が使われるようになったのです。
また、72 の法則はという近似が含まれるため、(2)式の第二項が大きくなってしまう 30%、40%のような利回りではかなり近似の精度が落ちてきます。大きい数字でのズレをみてみましょう。
利回り | 実際の | 72 の法則によって導かれた |
---|---|---|
8% | 10 | 9 |
12% | 7 | 6 |
24% | 4 | 3 |
36% | 3 | 2 |
ただ、ここまでの利回りになってくると 2 倍になるまでの年数自体があっという間であり、2 倍になるまでに何年かかるか、と言う計算自体がほとんど意味を持ちません。結果、実用的な範囲では 72 の法則が十分有効だということが分かりました。